虫プロ倒産のときに手塚治虫を救った、ある社長のこと
マンガ家・手塚治虫は、「虫プロダクション」というアニメーションスタジオを設立し、経営していました。虫プロは、日本初の(毎週30分放映の)テレビアニメのシリーズである『鉄腕アトム』(1963~66放映)をはじめ、手塚治虫原作の作品を中心にいくつものアニメを手がけた、日本有数のアニメーションスタジオでした。しかし、虫プロは1973年に多くの負債を抱えて倒産してしまいます。原因や経緯はいろいろありますが、...
View Article「大国・先進国ばかり」ではないのが、サッカーのワールドカップ
オリンピックと比較したときのサッカーのワールドカップ(以下単にワールドカップ)の特徴として、「大国・先進国ばかりが強いわけではない」ということがあると思います。いわば「サッカーにおける平等」が、限界はあるものの、かなり成立しています。たしかにヨーロッパの先進国や、ブラジルのような南米の大国が強いということはあります。しかし、ヨーロッパのなかでも中小国に有力な国があったり、アフリカやアジアの新興国・発...
View Article歴史と偉人の話が満載の『そういちカレンダー2023』をつくって販売しています
私そういちは毎年、歴史や偉人、社会などに関する記事がぎっしり詰まった、雑誌感覚の「読むカレンダー」をつくって『そういちカレンダー』という名称で販売しています(下の画像、現物はB5サイズ)。これをトイレの壁とか、家族や仲間が立ち止まって読むようなところに貼ってもらえるといいと思います。周りの人との共通の話題や、「話のネタ」「考えるきっかけ」を得られるはずです。2014年版から制作していて、今回で10年...
View Articleお金を使うのはむずかしい・防衛予算増額のこと
防衛予算の増額については、今の日本周辺の情勢だと、一定程度はやむを得ないと、私も思います。しかし心配なのは、「増額した予算をうまく使えるか?」ということです。アジア・太平洋戦争における日本軍は、軍事費の使い方が上手ではなかったようです。その象徴は戦艦大和のような、当時時代遅れになっていた巨艦に莫大な予算・資源を投じたことでしょう。アジア・太平洋戦争についての研究者のなかには、「日本軍はアメリカの圧倒...
View Article世界における「移民」「難民」の大まかで基本的な数字
「移民」「難民」のことは、世界情勢を理解するうえで非常に重要なはずですが、私たちはそれについては(世界情勢に関するほかのこととくらべても)まったく知識が足りないように思います。この記事では、世界における「移民」「難民」についてのごく大まかな統計の話をします。移民問題についての概説書や一般的な統計集で私が知ったことのうち「これは基礎的な数字だ」「興味深い」と思ったものについて述べます。各国の事情や「移...
View Articleハワード・ヒューズという究極の不幸な金持ち
12月24日のクリスマス・イブになると、私はこの日が誕生日の、ある大富豪のことを思い出します。20世紀のアメリカにハワード・ヒューズ(1905~1976)という大富豪がいました。彼は早死にした父親が創業した機械メーカーを18歳で相続し、その後まもなく、会社の支配を争った親戚を追放して経営の全権を握ります。それからは、映画や航空機の事業に進出して大成功。さらに不動産投資などで資産は膨らみ、晩年は今の価...
View Article2022年の世界と日本と当ブログをふり返る・「生き残りたい」
2022年最後の更新です。今年の世界・日本の出来事をふり返りながら、その出来事についての当ブログの記事を紹介します。そこで「当ブログの2022年のふり返り」でもあります。もくじロシアによるウクライナ侵攻安倍元首相殺害中国における新型コロナ対策防衛費増額・物価上昇――これまでのパターンが終わる?今年亡くなった人・いつまでもいると思うな「シン・ウルトラマン」と社会の変化の減速小熊『論文の書き方』...
View Article【新年の名言】星新一 ことしもまたごいっしょに宇宙旅行をしましょう
星新一(作家、1926~1997)がある年に友人たちに送った年賀状にはこう書かれていたそうです。ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速二十九・七キロメートル。マッハ九十三。安全です。他の乗客たちがごたごたをおこさないよう祈りましょう。(『きまぐれ博物誌』角川文庫所収のコラム「思考の麻痺」より)年賀状がまるでショ...
View Article「初詣」の歴史・じつは鉄道が生んだ新しい伝統
今年の初詣は、歩いて10分ほどの近所にある小さな神社に、元旦にお参りしました。その神社に初詣に行くのは初めてのことで、「小さな神社だから空いているだろう」と思っていました。しかし、かなりの人たちが(おそらく近所から)集まって行列になっていました。お参りするまで20分くらいは並んだでしょうか。そういえば近年は、コロナ禍の行動制限や自粛の影響もあってか、テレビで「電車でお参りに行くのではなく、近所で済ま...
View Articleいつまでもいると思うな・高橋幸宏さんの言葉
「いつまでもいると思うな高橋幸宏」――これは先日(2023年1月11日に)亡くなったYMOの高橋幸宏さん自身が数年前に述べた言葉です。2016年11月に、バンドMETAFIVEの一員として生出演した朝のワイドショー『スッキリ‼』で、高橋さんはそう言っていました(どんな文脈だったかは忘れた)。高橋さんの訃報を伝えた今朝の『スッキリ‼』で、過去の出演のVTRが流れていましたが、この発言は取り上げられてい...
View Articleベンジャミン・フランクリン 近代社会を精いっぱい生きた最強の独学者
1月17日は、ベンジャミン・フランクリン(1706~1790、アメリカ)の誕生日です。フランクリンは、ワシントン、ジェファーソンと並ぶアメリカ独立の功労者で、電気学などの科学研究や、さまざまな社会事業で活躍しました。哲学や社会科学の分野でも業績があります。そして、アメリカでは最もおなじみの偉人の1人で、100ドル紙幣の肖像にもなっています。しかし、日本では「凧をあげる実験で雷が電気であることを確かめ...
View Article素人が「科学とは何か」を考えるための本・『サイエンス・ファクト』
ガレス・レン&ロードリ・レン『サイエンス・ファクト 科学的根拠が信頼できない訳』(塚本浩司監訳・多田桃子訳、ニュートン新書、2023年)という本を読みました。イギリスの生理学者である父と、科学社会学的な分野の研究者である息子による共著。サイエンス・ファクト 科学的根拠が信頼できない訳 (ニュートン新書)作者:ガレス レン,ロードリ...
View Article「公助」を使うのも主体性・「間違った自助努力」に気をつける
自分で頑張るだけでなく、周囲や、あるいは社会による支援に頼ることをどう考えるか? 「自助」「共助」「公助」という言葉もありますが、それらの関係や優先順位についてどう考えるか?...
View Articleプーチンの「被害者意識による正当化」という思考回路
先日(2023年2月21日)の年次教書演説など、ロシアのプーチン大統領は「ウクライナでの紛争を煽り、犠牲を拡大させたのは、西側の権力者とウクライナの現政権だ」という発信をくり返しています。それは要するに「自己正当化」ということですが、その「正当化」で特徴的なのは「われわれこそが被害者である」という主張です。この「被害者意識」による主張を要約すると、以下のようになるでしょう(特定の演説ではなく、プーチ...
View Article久しぶりに(テレビで)野球観戦・ムダな時間を心ゆくまで楽しむ
今回のWBCで、私は久しぶりに野球の試合を(テレビの中継ですが)心ゆくまで楽しみました。今50代後半の私は、子どもの頃(1970年代~80年頃)には、よくプロ野球のナイター中継をみたものです。とくに野球ファンというわけではなかったのですが、野球をテレビでみることは、日常的なあたりまえの楽しみの一つでした。そしてスポーツ観戦といえば、まず野球だったのです。でも社会人になって忙しくなると、野球をみなくな...
View Article「個の力を削ぐもの」を除去するリーダー・2人の代表監督の仕事ぶり
組織のリーダーの重要な役割として、次のことがあると思います。「“メンバー個々人が能力を発揮するうえで妨げとなる要素”が組織のなかで大きくならないように、その発生を抑えたり、小さな芽のうちに除去したりすること」これは、サッカーワールドカップとWBCの、それぞれの日本代表監督の様子を伝える報道をみて思ったことです。森保監督と栗山監督のリーダーシップは「組織から“個の力を削ぐもの”を除去する」ことが大きな...
View Article子どもたちの楽しみにおける「物語」の地位低下
「今の子どもに“物語”の楽しさや価値を伝えたい」――これはこのあいだ少しお話することがあった、ある若い国語の先生が述べていたことです。この先生は、つぎのような話をされました。「今の子どもは、自分が子どもだった頃(10年~10数年前)以上に、インターネットの短い動画やゲームの影響が強い。じっくりと小説やマンガの物語を味わう読書の経験はもちろんのこと、テレビでアニメを観ることさえ減ってきている(「マンガ...
View Articleチャップリン・独創ではないからこそ長く残った
山高帽、ダブダブのズボン、大きなドタ靴、ちょびヒゲ。「喜劇王」といわれた俳優・映画監督チャーリー・チャップリン(1899~1977、イギリス出身、おもにアメリカで活躍)のおなじみの扮装です。でも、この扮装は彼の独創ではありません。その各パーツは、当事人気のあったコメディアンの影響を受けたものだといいます。研究家によれば、ズボンと帽子は誰から、靴は誰から、ヒゲは誰から、というふうに特定できるのだそうで...
View Articleモハメド・アリ 私たちに多くを与えてくれたアスリート
6月3日(この記事をアップした日)は、ボクサーのモハメド・アリ(1942~2016、アメリカ)の命日です。このブログでは、コンテンツの一部として、その誕生日や命日などに偉人を紹介する記事をたまにのせています。モハメド・アリは、ボクシング史上最も有名なボクサーでしょう。それは強かったからだけではありません。強さや戦績だけなら、彼に匹敵する人はほかにもいます。アリはローマオリンピック(1960年)で金メ...
View Article生成型AIは「人間の精神」と「外界」のつながりを歪めるかもしれない
ChatGPTに代表される生成型AIというのは、情報の検索や整理、アイデアの検討などに役立つ道具です。そういうものとして使いこなせる人は、ぜひ使えばいいと思います。その一方でChatGPTは「人間の精神・認識」と「外界」の関係をかく乱したり、歪めたりする恐れがある道具だとも思います。人間の精神・認識と外界の関係を歪めるリスク――これが生成型AIの「負の側面(副作用)」の本質的なところではないか。生成...
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